カメラマンの確定申告|報酬から引かれた税金を取り戻す
撮影の報酬から「源泉徴収税額」が引かれていたら、確定申告で精算します。引かれすぎている人が多く、申告すると戻ってくることがあります。仕組みと手順をやさしく解説します。
撮影の仕事をしていると、振込額が請求額より少ないことがあります。明細を見ると「源泉徴収税額」という欄が引かれているはずです。これは損をしているのではなく、税金を前払いしている状態です。
いくら引かれているのか
報酬・料金の源泉徴収は、次の計算で行われます。
| 1回の支払額 | 引かれる金額 |
|---|---|
| 100万円以下 | 支払額 × 10.21% |
| 100万円超 | (支払額 − 100万円)× 20.42% + 102,100円 |
たとえば撮影料が5万円なら5,105円、10万円なら10,210円が引かれます。10.21%という半端な数字は、所得税10%に復興特別所得税(所得税額の2.1%)が上乗せされているためです(令和9年1月以後は復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1%に分かれますが、合計は同じです)。
報酬額を入れると、引かれる税額と手取りがその場でわかります。
請求書の書き方で、引かれる額が変わります
撮影料に消費税を含めて請求すると、消費税の分にも源泉徴収がかかります。請求書で報酬と消費税を分けて書けば、源泉徴収は報酬の額だけで計算してよいとされています(国税庁 No.2792)。
| 請求書の書き方 | 源泉徴収の対象 | 引かれる額 |
|---|---|---|
| 撮影料 110,000円(税込みで一本) | 110,000円 | 11,231円 |
| 撮影料 100,000円+消費税 10,000円 | 100,000円 | 10,210円 |
どちらでも最終的な税金は確定申告で精算されますが、前払いが少ないほうが資金繰りは楽です。インボイスを出す場合も、税率ごとの消費税額を書くので自然に分かれます。
ロケの交通費・宿泊費はどう扱う?
交通費や宿泊費を報酬に含めて受け取ると、その分も源泉徴収の対象になり、収入にも含めます(かかった交通費は必要経費にします)。一方、依頼主がホテルや交通機関に直接支払った通常必要な範囲の交通費・宿泊費は、報酬に含めなくてよいとされています。
遠方のロケが多い人は、宿泊や新幹線を依頼主に手配してもらうか、自分で立て替えて請求するかで、引かれる額と売上の金額が変わることを覚えておくと安心です。
引かれる相手・引かれない相手
源泉徴収をする義務があるのは、法人と、人を雇っている個人事業主です。制作会社・出版社・企業からの依頼は引かれることが多く、個人のお客さまの記念撮影は引かれないのがふつうです。引かれていない報酬も当然に収入なので、両方を合わせて1年分の売上を集計します。
経費が多い人ほど戻りやすい理由
源泉徴収は、経費をいっさい考えずに報酬額だけで計算されます。一方、実際の税金は「売上 − 経費 − 各種控除」に対してかかります。
カメラマンは機材・交通費・外注のレタッチ代など経費が大きくなりやすい仕事です。そのため前払いした税額が本来の税額を上回りやすく、申告すると差額が還付されることがあります。
計算例(令和8年分・数字は仮のもの): 企業からの撮影料が年300万円で、源泉徴収が30万6,300円。機材の減価償却・交通費・レタッチの外注などの経費が150万円、青色申告特別控除65万円、社会保険料控除35万円とします。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 事業所得(300万円−150万円−65万円) | 85万円 |
| 課税所得(85万円−基礎控除104万円−35万円) | 0円 |
| 本来の所得税 | 0円 |
| 前払いした源泉徴収 | 30万6,300円 |
| 確定申告で戻る額 | 30万6,300円 |
基礎控除が104万円に上がった令和8年分は、経費の多いカメラマンほど前払いした全額が戻ることも珍しくありません。
1年間の利益を入れると、所得税・住民税・手取りの目安がわかります。
支払調書がなくても申告できます
年明けに「支払調書」が届くことがありますが、届かないことも珍しくありません。支払調書は支払った側が税務署に提出する書類で、あなたに交付する義務まではないためです。
届かなくても申告はできます。次のものから集計してください。
- 請求書の控え(請求額)
- 通帳の入金記録(振込額)
- 支払明細(源泉徴収額が書かれていることが多い)
請求額と振込額の差が、引かれた源泉徴収額です。振込手数料が引かれている場合は、その分も分けて記録しておきます。
税理士に相談すべきライン
売上が大きくなってきたとき、法人からの依頼と個人からの依頼が混在して集計が複雑なとき、消費税の課税事業者になりそうなときは、税理士に相談すると安心です。
あわせて読みたい: カメラマンの機材と経費|レンズ・中古カメラの落とし方 / 個人事業主の経費 完全ガイド
参考にした一次情報(出典)
本記事の制度・数値は、次の国税庁の公表情報を参照しています。税率・控除額・要件は改正で変わるため、最新の内容は各ページ(一次情報)でご確認ください。
よくある質問
撮影料から引かれていた「源泉徴収税額」とは何ですか?
報酬を支払う会社が、あらかじめ所得税を差し引いて国に納めておく仕組みです。あなたの税金を前払いしている状態なので、確定申告で正しい税額と比べて精算します。
引かれた分は戻ってきますか?
源泉徴収は経費を考えずに報酬額だけで計算されるため、経費が多い人ほど前払いが多すぎる状態になりがちです。確定申告をすると、差額が還付されることがあります。
個人のお客さまからの撮影料も源泉徴収されますか?
源泉徴収をする義務があるのは、原則として法人や、人を雇っている個人事業主です。個人のお客さまから直接受け取る撮影料は、引かれないのがふつうです。
支払調書がもらえません。申告できますか?
できます。支払調書は税務署に提出する書類で、あなたに交付する義務まではありません。振込明細や請求書の控えから、報酬額と源泉徴収額を集計して申告します。
源泉徴収されていない報酬はどうしますか?
引かれていない報酬も、当然ながら収入として申告します。引かれた分と引かれていない分を合算して1年分の売上とし、そこから経費を引いて所得を計算します。
交通費や材料費として受け取った分も収入ですか?
名目が交通費・車代・材料費であっても、報酬の性質をもつものは収入に含めるのが原則です。かかった費用のほうは経費として計上します。
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本記事は一般的な解説であり、税務代理・税務相談ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。 税制は改正されます。最新の法令・通達と対象年度をご確認ください。