一人親方の保険と年金——労災特別加入・国保・老後の備え
一人親方は会社員のような保険に入れません。労災の特別加入、国民健康保険と建設国保の違い、年金の上乗せ、所得控除になるものとならないものを整理します。
一人親方は「働く人」でありながら、労働者としての保護を受けられません。ケガをしたとき、病気をしたとき、仕事を辞めたあとに何があるのかを知っておくと、必要な備えが見えてきます。
労災保険の特別加入
労災保険は本来、雇われている人のための制度です。一人親方は労働者ではないため通常は加入できませんが、建設業などでは特別加入という仕組みがあります。
- 一人親方等の団体を通じて加入します。
- 保険料は、あらかじめ選んだ給付基礎日額に応じて決まります。
- 業務中や通勤中のケガ・病気が給付の対象になります。
- 元請から加入を求められることが多く、現場に入る条件になっている場合もあります。
健康保険は2つの選択肢
市区町村の国民健康保険
前年の所得に応じて保険料が決まります。所得が下がれば保険料も下がりますが、所得が高くなるとそれに応じて上がり、上限額も自治体によって異なります。
建設国保(建設業の国民健康保険組合)
建設業に従事する人が加入できる組合の健康保険です。所得にかかわらず定額のことが多く、所得が高い人ほど市区町村の国保より有利になりやすい傾向があります。加入には組合や支部の要件があります。
どちらが有利かは所得と家族構成で変わります。独立した直後で所得が読めない時期は、両方の保険料を試算してから決めるのが現実的です。いずれも支払った全額が社会保険料控除の対象です。
年金の上乗せ
国民年金だけでは、会社員の厚生年金に比べて受け取れる額が少なくなります。上乗せの制度はいくつかあり、掛金はすべて所得控除になります。
- 付加年金……月400円を上乗せすると、受給時に「200円×納付月数」が毎年加算されます。少額で始めやすい制度です。
- 国民年金基金……掛金の上限は月6万8,000円(iDeCoと合算)。
- iDeCo……同じく月6万8,000円まで。運用の成果によって受取額が変わります。
- 小規模企業共済……月7万円まで。廃業や引退のときに受け取る制度で、上記とは別枠です。
どの制度を使えていないか、数問でチェックできます。
経費になるもの・ならないもの
間違えやすい区別をまとめます。
- 必要経費になる……工具、作業着、安全靴、材料費、車両費、現場までの交通費、資格の講習費、賠償責任保険(事業のためのもの)
- 所得控除になる(経費ではない)……労災特別加入の保険料、国民健康保険料、国民年金保険料、国民年金基金、iDeCo、小規模企業共済の掛金、生命保険料
所得控除は「控除額×税率」の分だけ税金が減るのに対し、経費は所得そのものを減らします。効き方が違うため、正しく区別して処理することが大切です。
仕事が途切れたときのために
一人親方には雇用保険がなく、失業給付はありません。案件が途切れる時期に備えて、生活費の数か月分を分けて置いておくと安心です。小規模企業共済は廃業時の受け取りに加え、契約者向けの貸付制度もあります。
税理士に相談すべきライン
従業員を雇う、売上が1,000万円を超えそう、法人化を検討している、元請との契約形態が変わった——こうした場合は税理士に相談すると安心です。保険や労務の手続きは社会保険労務士の領域になることもあります。
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参考にした一次情報(出典)
本記事の制度・数値は、次の国税庁の公表情報を参照しています。税率・控除額・要件は改正で変わるため、最新の内容は各ページ(一次情報)でご確認ください。
よくある質問
労災の特別加入は必須ですか?
法律上の義務ではありませんが、元請から加入を求められることが多い制度です。現場に入る条件になっている場合もあります。
労災の保険料は経費になりますか?
なりません。社会保険料控除として所得控除の対象になります。経費と所得控除では税額への効き方が違うため、区別して処理してください。
建設国保と市区町村の国民健康保険はどちらが得ですか?
所得や家族構成によって変わります。建設国保は所得にかかわらず定額のことが多く、所得が高い人ほど有利になりやすい一方、所得が低い時期は市区町村の国保のほうが安くなることもあります。
国民年金だけでは不安です。
国民年金基金、付加年金、iDeCo、小規模企業共済といった上乗せの制度があります。いずれも掛金が所得控除の対象になります。
ケガで働けなくなったときの備えはありますか?
労災の特別加入に入っていれば、業務中のケガは給付の対象になります。業務外のケガや病気については、所得補償保険などの民間の保険を検討する人もいます。
従業員を雇ったら手続きは変わりますか?
給与支払事務所等の開設届出書の提出が必要になり、労働保険や社会保険の手続きも生じます。人を雇う前に税理士や社会保険労務士に確認すると安心です。
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本記事は一般的な解説であり、税務代理・税務相談ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。 税制は改正されます。最新の法令・通達と対象年度をご確認ください。