引っ越し費用は経費になる?|自宅兼事務所の場合
事業所の移転費用は経費になりますが、住まいの引っ越しは家事費です。自宅兼事務所の場合はどうなるのか、按分の考え方をやさしく解説します。
引っ越しにはまとまったお金がかかります。これが経費になるかどうかは、何のための引っ越しかで決まります。
3つのパターンに分かれます
| 引っ越しの内容 | 扱い |
|---|---|
| 事業所・店舗の移転 | 経費になる |
| 住まいだけの引っ越し | 家事費(経費にならない) |
| 自宅兼事務所の引っ越し | 事業に使う割合で按分 |
判断の軸は、必要経費の基本と同じ「事業のために必要だったか」です。生活のための引っ越しは、事業をしていなくてもかかる支出なので家事費になります。
費目ごとの扱い
| 費目 | 扱い |
|---|---|
| 引っ越し業者への支払い | 事業割合で按分 |
| 仲介手数料 | 事業割合で按分(支払った年の経費) |
| 敷金・保証金(返ってくる分) | 経費にならない(資産) |
| 礼金 | 原則として繰延資産として一定期間で費用に |
| 前家賃 | その期間の経費(按分) |
| 火災保険料 | 期間に応じて経費(按分) |
| 原状回復費用 | 事業所として使っていた部分は経費 |
| 家具・家電の購入 | 事業用のものは金額により処理が変わる |
自宅兼事務所の按分
自宅で仕事をしている人の引っ越しは、事業に使う割合で按分します。
按分の基準は面積がいちばん説明しやすい方法です。
例: 引っ越し費用20万円、新居60平方メートルのうち仕事部屋が12平方メートル
- 事業割合 …… 12 ÷ 60 = 20%
- 経費にできる金額 …… 20万円 × 20% = 4万円
引っ越しの前後で事業に使う面積の割合が変わることもあります。その場合は、新しい割合をその時点から使うのが自然です。変えた理由をメモしておいてください。
品目名を入れると、経費になるか・按分が必要か・どの科目かがわかります。
残しておくとよいもの
按分は自己申告なので、根拠を残しておくことが大切です。
- 引っ越し費用の明細と領収書
- 新旧の間取り図(面積と用途を書き込んだもの)
- 賃貸借契約書(敷金・礼金の内訳がわかるもの)
- 按分の計算メモ
事業所を移転する場合
店舗や事務所を移転する場合、費用の全額が経費になります。ただし移転先の内装工事は別で、金額が大きくなりやすく、減価償却の対象になるのが原則です。
- 移転そのものの費用(運搬・仲介手数料など)……経費
- 内装工事・造作……建物附属設備などの資産として減価償却
- 新しく買った什器・備品……金額により処理が変わる
金額と耐用年数を入れると、少額特例の判定と毎年の償却額がわかります。
手続きも忘れずに
費用の処理とは別に、引っ越しにともなう税務手続きがあります。納税地の届出は不要になりましたが、人を雇っている場合は移転の届出が必要です。
納税地の届出が不要になった件と、いまも必要な手続きを解説しています。
税理士に相談すべきライン
移転の費用が大きいとき、内装工事をともなうとき、按分の割合の説明に自信がないときは、税理士に相談すると安心です。
あわせて読みたい: 引っ越したときの手続き / 自宅家賃を経費にする方法
参考にした一次情報(出典)
本記事の制度・数値は、次の国税庁の公表情報を参照しています。税率・控除額・要件は改正で変わるため、最新の内容は各ページ(一次情報)でご確認ください。
よくある質問
引っ越し費用は経費になりますか?
事業所を移転するための費用は経費になります。住まいだけの引っ越しは家事費です。自宅兼事務所の場合は事業に使う割合で按分します。
敷金は経費になりますか?
なりません。返ってくるお金なので資産として扱います。退去時に返らないことが確定した分は、そのときに費用にします。
礼金はどう処理しますか?
原則として繰延資産として一定期間で費用にしていきます。金額が小さい場合は支払った年の経費にできることもあります。
仲介手数料は経費になりますか?
事業に使う部分については支払った年の経費にできます。自宅兼事務所なら事業割合で按分します。
原状回復費用は経費になりますか?
事業所として使っていた部分の原状回復費用は経費になります。敷金から差し引かれた場合も、その分を経費として計上します。
按分の割合はどう決めますか?
面積の割合で決めるのが説明しやすい方法です。引っ越し前と後で事業に使う面積の割合が変わる場合は、それぞれの実態に合わせます。
個人事業主・法人の税務を、AIと無料ツールでやさしく。出典と更新日を明記し、税理士監修を進めています。
本記事は一般的な解説であり、税務代理・税務相談ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。 税制は改正されます。最新の法令・通達と対象年度をご確認ください。