廃業した年の確定申告|あとから入るお金と出るお金
廃業してからも、売掛金が入ってきたり費用が発生したりします。これらをどの年の計算に入れるのか、設備を処分したときの扱いとあわせて解説します。
廃業の届出を出しても、お金の動きはすぐには止まりません。売掛金があとから入ってきたり、片づけの費用が発生したりします。これらをどう扱うかを整理します。
廃業した年も申告します
1月1日から廃業までの所得について、翌年の確定申告期間に申告します。廃業した時点ですぐ申告するわけではありません。
会社員に戻った場合は、事業所得と給与所得の両方を合わせて申告します。就職先の年末調整では事業所得は処理されないためです。
売掛金は「入金日」ではありません
ここを間違えると金額が合わなくなります。売上に計上するのは、原則として取引が完了して金額が確定した日です。入金された日ではありません。
| 仕事をした時期 | 入金 | どの年の売上か |
|---|---|---|
| 廃業前 | 廃業後 | 廃業した年 |
| 廃業前 | 翌年 | 廃業した年 |
廃業した時点で未回収の売掛金がいくらあるかを、必ず一覧にしておいてください。翌年に入金されても、その年の売上ではありません。
廃業後に発生した費用
廃業したあとにも、次のような支出が出てきます。
- 事務所の原状回復費用
- 最後の月の電気代・通信費
- 廃業に関する税理士報酬
- 在庫や備品の処分費用
事業をしていた期間に対応する費用であれば、廃業した年分の必要経費にできる場合があります。ただし扱いが特殊な部分なので、金額が大きいときは税務署や税理士に確認してください。
いずれにしても、領収書は捨てずに保管しておくことが前提になります。
設備を売った・処分した
事業に使っていた資産をどうするかで、扱いが変わります。
| どうしたか | 扱い |
|---|---|
| 売った | 原則として譲渡所得として計算(事業所得の売上ではない) |
| 捨てた・廃棄した | 帳簿に残っている未償却の金額を損失として計上 |
| 私用に転用した | 事業をやめた時点で事業用ではなくなる |
廃棄した場合は、いつ・何を・どう処分したかの記録を残してください。処分費用の領収書や、廃棄したことがわかる写真が根拠になります。
在庫が残っているとき
販売用の在庫が残っている場合、
- 売り切った……通常どおり売上に計上
- 処分した……処分したことがわかる記録を残す
- 自分で使った……事業をやめた時点で事業用ではなくなる
という整理になります。年末の棚卸と同じ考え方です。
赤字なら繰越と繰戻し
廃業した年は、片づけの費用がかさんで赤字になることがあります。青色申告をしていれば、
- 赤字を翌年以後3年間繰り越す
- 前年も青色なら、前年に納めた所得税の還付を受ける(繰戻し還付)
という選択ができます。廃業後に事業所得が生まれない場合、繰越よりも繰戻し還付のほうが実際に現金が戻るぶん有利になることがあります。
繰越と繰戻しの違い、どちらを選ぶかの考え方を解説しています。
帳簿は保存が必要です
廃業しても、帳簿や領収書は保存期間が終わるまで保管する必要があります。あとから問い合わせを受けたときに説明できなくなるため、まとめて保管しておいてください。
設備の未償却残高を確認できます。処分や売却の金額を出すときの目安に。
税理士に相談すべきライン
売掛金や借入金が残っているとき、設備を売却するとき、在庫の処分の金額が大きいとき、赤字の扱いに迷うときは、税理士に相談すると安心です。廃業の年は判断が分かれる論点が集まりやすい年です。
あわせて読みたい: 廃業するときの手続き / 赤字が出た年こそ確定申告を
参考にした一次情報(出典)
本記事の制度・数値は、次の国税庁の公表情報を参照しています。税率・控除額・要件は改正で変わるため、最新の内容は各ページ(一次情報)でご確認ください。
よくある質問
廃業した年も確定申告は必要ですか?
必要です。1月1日から廃業までの所得について、翌年の確定申告期間に申告します。
廃業後に入金された売掛金はどうなりますか?
売上に計上するのは入金された日ではなく、原則として取引が完了して金額が確定した日です。廃業前に確定していた分は、廃業した年の売上になります。
廃業したあとに発生した費用はどうしますか?
事業をしていた期間に対応する費用であれば、廃業した年分の必要経費にできる場合があります。扱いが特殊なので税務署や税理士に確認してください。
回収できなかった売掛金は?
回収できないことが確定した場合、貸倒れとして処理できることがあります。相手の状況を示す資料を残してください。
設備を売った場合はどうなりますか?
事業用の資産を売った場合、原則として譲渡所得として計算します。事業所得の売上に入れるものではありません。
廃業した年が赤字でした。
青色申告をしていれば、赤字を翌年以後3年間繰り越せます。前年も青色なら、前年の所得税の還付を受ける繰戻し還付も検討できます。
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本記事は一般的な解説であり、税務代理・税務相談ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。 税制は改正されます。最新の法令・通達と対象年度をご確認ください。