法人の社会保険|社長1人でも加入が必要
法人にすると、従業員がいなくても社会保険への加入が原則として必要になります。負担の大きさと、役員報酬との関係をやさしく整理します。
法人化を考えるとき、税金の比較ばかりに目が行きがちです。しかし実務でいちばん効いてくるのは、社会保険の負担であることが少なくありません。
個人事業主のときとの違い
| 個人事業主 | 法人 | |
|---|---|---|
| 医療保険 | 国民健康保険 | 健康保険 |
| 年金 | 国民年金 | 厚生年金 |
| 加入の義務 | 従業員5人未満なら任意のことが多い | 原則として強制適用 |
| 保険料の負担 | 全額が本人 | 会社と本人で折半 |
| 保険料の計算 | 前年の所得など | 報酬の額に応じた等級 |
「折半だから半分で済む」と思いがちですが、社長1人の会社では会社の負担も実質的に自分の負担です。合計の金額で見る必要があります。
負担の大きさ
健康保険と厚生年金を合わせると、報酬のおよそ3割に達することもあります(都道府県や年齢によって変わります)。
例: 役員報酬を月50万円にした場合の目安
- 年間の報酬 …… 600万円
- 社会保険料(労使合計)の概算 …… 年180万円前後
このうち半分は会社の経費になりますが、会社と個人を合わせたお金の出方で見ると、決して小さくありません。法人化の損得を計算するときは、必ずこれを含めてください。
社会保険料も含めて、個人のままと法人化のどちらが有利かを概算で比較できます。
役員報酬の決め方と直結します
保険料は報酬の額に応じた等級で決まります。つまり役員報酬を決めることは、社会保険料を決めることでもあります。
- 報酬を上げる …… 所得税・住民税+社会保険料が増える
- 報酬を下げる …… 会社に利益が残り法人税がかかる/将来の年金額は下がる
どこが最も負担が小さいかは所得の水準で変わります。役員報酬は事業年度の最初の3か月以内にしか決め直せないため、社会保険料まで含めて考えたうえで決める必要があります。
毎月同額でないと損金にならないこと、改定できる期間の制約を解説しています。
損ばかりではありません
負担は重くなりますが、受けられる保障は手厚くなります。
- 年金……国民年金に加えて厚生年金の部分が上乗せされる
- 傷病手当金……病気やけがで働けないときの給付(国民健康保険には一般的にない)
- 出産手当金……産休中の給付(同上)
- 扶養……配偶者や子どもを扶養に入れられる(人数が増えても保険料は変わらない)
家族が多い場合、国民健康保険は人数に応じて保険料が上がりますが、健康保険では扶養に入れれば増えません。家族構成によっては法人のほうが有利になることもあります。
従業員を雇うとき
一定の要件を満たす従業員も加入の対象になります。会社が保険料の半分を負担するため、給与の額面だけで人件費を見積もると足りなくなります。
「月25万円で雇う」つもりでも、会社の実際の負担は30万円近くになると考えておくのが安全です。
税理士に相談すべきライン
法人化を検討している段階で、社会保険料を含めた試算を依頼することをおすすめします。税金だけで比較すると法人が有利に見えても、社会保険を入れると逆転することがあります。手続きそのものは社会保険労務士が専門です。
あわせて読みたい: 役員報酬の決め方 / 法人成りの完全ガイド
参考にした一次情報(出典)
本記事の制度・数値は、次の国税庁の公表情報を参照しています。税率・控除額・要件は改正で変わるため、最新の内容は各ページ(一次情報)でご確認ください。
よくある質問
社長1人の会社でも社会保険に入りますか?
法人は原則として強制適用となり、役員1人であっても加入が必要とされています。詳しくは年金事務所にご確認ください。
保険料はどれくらいかかりますか?
健康保険と厚生年金を合わせると、報酬のおよそ3割に達することもあります。会社と本人で折半しますが、社長1人の会社では実質的にどちらも自分の負担です。
役員報酬をゼロにすれば加入しなくてよいですか?
報酬が支払われていない場合の扱いについては年金事務所の判断になります。ただし報酬をゼロにすると、生活費を会社から出せなくなるという別の問題が生じます。
個人事業主のときと何が違いますか?
個人事業主は原則として国民健康保険と国民年金でしたが、法人では健康保険と厚生年金になります。保険料の計算方法も、給付の内容も変わります。
従業員を雇ったらどうなりますか?
一定の要件を満たす従業員も加入の対象になります。会社が保険料の半分を負担するため、人件費の見積もりに含める必要があります。
手続きはどこでしますか?
年金事務所です。設立後すみやかに手続きが必要とされています。詳しい要件や期限は年金事務所または社会保険労務士にご確認ください。
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本記事は一般的な解説であり、税務代理・税務相談ではありません。個別の判断は税理士にご相談ください。 税制は改正されます。最新の法令・通達と対象年度をご確認ください。